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上京したての新卒サラリーマンが「ナンパ」をはじめてから、やらなくなるまで(中編)

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上京したての新卒サラリーマンが「ナンパ」をはじめてから、やらなくなるまで(前編) の続きです。 

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■ナンパで出会った女性と数時間でセックスをする

高石宏輔さんにナンパを教えてもらってから、仕事もプライベートも関係なかった。ナンパは気になる女性が視界に入ったらそれだけでできる。

「その日の最初の声掛けが一番緊張します。それさえ乗り越えれば後は楽になります。だから毎日ナンパしてください。そうですね。毎日2声掛けしてください」そう講習の終わりに言われたことを繰り返した。

「ナンパは薬です。あなたが女性に声をかけて落ち着くなら毎日声掛けしてください」

駅から会社に行く間、会社帰りなど気になった女性を見かけたらとにかく声をかけていた。実際、ナンパは楽しかった。それまで僕が幻想の中にいる存在だった、手が届かない存在だった渋谷や新宿を歩く綺麗なギャルやOLに触れることができている。ナンパ講習を経てナンパできる状態を知ってるから、あとは少しの覚悟があればいい。今までは遠くから見るだけだった宝石の手触りを確かめるようにナンパをした。それに声を掛ける度に課題が見つかって「次はこうやって声を掛けてみよう」と試行錯誤するプロセスも楽しかった。僕は夢中になっていった。他のナンパ師と合流することもほとんどせず、ひたすら一人で声を掛けていた。

その日はたしか、ナンパを教わってから一週間ほど経った日だったと思う。仕事帰りに、駅の近くでゆっくり歩いている背の低いギャルを見かけた。20歳くらいだろうか。そう思いながら声をかけた。

「なんかゆっくり壁際歩いてますね。服こすりますよ」こっちをちらっと見て

「そうなんですよー買い物疲れちゃって」と反応は良かった。

ゆっくりと歩きながら話すとこれから帰るところらしい。近くの喫煙所に入って一緒にタバコを吸う。明らかに暇を持て余しているようなギャル。可愛かった。

「タバコ吸ったらお腹減ってることに気付いたわ。ちょっとそこ付き合ってよ。」

そのまま近くの居酒屋へ。ビールを飲みながらお互いの恋愛の話をした。今まで何人付き合ったのか、何がきっかけで付き合って何が理由で別れたのか。どこに遊びにいくことが多いのか。20歳くらいでノリのいい子だったから、そこそこ盛り上がった。どういうセックスが好きなのか。最近したセックスはいつか。そのセックスはどうだったのか。

途中でトイレに立ってその日に泊まるホテルを予約した。そのまま何も言わずに「もっとゆっくり話そうよ」と言ってホテルに入った。少し渋られたけど流しながらひたすら褒めた。如何にあなたに興味があるかを伝えた。その時はそれしかできなかった。必死さが通じたのかホテルに入ることができた。部屋に入ってすぐに押し倒した。「電気だけは消して」そう言われたからその通りにした。僕は興奮していた。嬉しさを噛み締めていた。幻想だと思っていた”出会って数時間の綺麗な女性とセックスをすること”を味わうことができている。ナンパ師的な報告の仕方をするならば”20歳学生ロリ系ギャル、Eカップ即”というところだろうか。

下着の中に手を入れるとこの子はすぐに潮を噴いた。それが僕を更に興奮させた。睡眠を忘れて何回もセックスをした。ベッドはべちょべちょに濡れていた。バスタオルを敷いて少しだけ眠った。

僕はセックス中の会話が好きだ。この女性が行為中にふと洩らした言葉を今でも覚えている。「私は軽い女じゃないからね」出会って数時間の僕とセックスをしながら発した言葉。僕は多少の違和感を感じつつも、そんなものは数回腰を振ったら快楽の中に消えていったのだけど。

翌日ホテルからタクシーで会社に向かった。昨夜の高揚感を思い出すだけで笑みがこぼれた。この日も帰り道でナンパをしていた。

 

遠距離恋愛していた彼女と別れる

ナンパをしながらも、学生時代から長く付き合っている遠距離恋愛中の彼女がいた。その彼女が東京に遊びにくることになった。もちろんナンパをしていることを知らない彼女は観光気分で楽しそうにしている。僕に久しぶりに会えて嬉しそうにしている。一方ナンパをしていた僕は全く楽しめないでいた。それにその頃は仕事が忙しくて休みもあまりなかったから余計に疲れていて会うことすらも億劫だった。横浜のお洒落なレストランで食事をしていても僕は笑顔の一つも見せなかった。周りは楽しそうなカップルで溢れている。彼女が突然泣き出した。今思えば当然のことだと思う。その日は彼女の誕生日が近かったからケーキを用意してなんとか機嫌を取ることができた。夜もセックスを求められたけれど「仕事で疲れているから」と頑なに拒んだ。もはやなぜ付き合っているのかわからなかった。久しぶりに会ったのに彼女への関心が全くなくなっていた。一緒にいても楽しくなかった。それでも彼女は「遠距離はつらいから、近くいるために数ヶ月後に東京へ引っ越そうと思うんだ」と言っていた。

彼女が帰った翌週に僕はメールで突然「もう別れよう」と言った。数年付き合っていたけれど一方的に別れを切り出した。ちゃんと会って伝えなきゃいけないという気持ちはあったけれど、会うことが怖かった。彼女が東京に引っ越す準備を始めていたのだから、尚更だ。鬱病になったときも影で支えてくれた彼女だったけど「俺にはナンパがある。だから大丈夫だ」本気でそんなことを思っていた。

 

■ナンパへのモチベーションの低下

彼女と別れたのは、すごく悲しかった。自分から一方的に別れを切り出したのにも関わらず、思い出しては涙が溢れる。その感情を振り払うためにナンパをしていた。渋谷の路上には自分の好みの女性はいくらでもいる。声をかける時間もたっぷりある。やっと彼女と別れて好きなだけナンパできる。

そんな矢先、なぜか前より路上にいる時間が減っていることに気付いた。最初は仕事が忙しくて疲れているのだと思っていた。それから時間が経ってもなかなか渋谷の街に出ることができなくなった。ようやく彼女と別れて気兼ねなくナンパが出来ると持っていたのに。街に出ても、女性を見ているだけで声を掛けれない状態、ナンパ用語でいう”地蔵”する時間が明らかに増えた。

僕は焦っていた。焦って僕はまた高石宏輔さんに助けを求めた。今思うと完全に依存していたと思う。自分で考えずに「俺は高石宏輔さんに教えてもらえればナンパができるようになるんだ」と思い込んでいた。そんな考えでコミュニケーション講座”ラポールと身体知”に参加した。もちろん高石さんには見抜かれていた。

「どうすれば教えてもらった時のようにナンパできるようになりますか?」

そんなくだらない質問ばかりする僕。

「今あなたにお教えできることは何もありません」

高石さんにそう言われて、その時の僕には何がなんだかわからなかった。悔しかった。そんな感情をぶつけるようにナンパをしていた。もう僕の拠り所はナンパしかなくなっていた。必死に声を掛け続けた。

 

僕がナンパをやっていることに疑問を持ち始めたのは”ストレングスファインダー”という性格診断ツールをやった時だ。それは”180問のテストに答えると、無意識の癖となっている思考・感情・行動のパータンを34個の資質として分類して傾向が強い順番に示してくれる”というもの。自分で言うのもなんだが、当時の僕は「目標思考」「社交性」「ポジティブ」など営業向きの性格をしていると思っていた。大学時代に自己啓発にハマり、色んなイベントの主催をしまくってコミュニケーション能力が鍛えられていると思っていたからだ。だが結果として僕の強みは「内省」「共感性」など予想していないものだった。それらの資質はとても営業に向いているものとは思えなかった。

今の僕はとあるメーカーで営業職として働いている。その会社に入るきっかけは”尊敬している人”が働いていたから。大学時代からお世話になっているその人は常に明るかった。声も大きくて、何でも楽しそうに話すし実際に話も面白い。仕事面でもすごく優秀で史上最年少で年間MVPをとるような人。そんな太陽のような人だから彼の周りにはいつもたくさんの人がいた。その人の資質こそ「目標思考」「社交性」「ポジティブ」だった。僕もその資質があると思い込んでいた。だから”その人になろう”としていた。全く同じように振る舞うことを自分に要求していた。でもできるわけなかった。資質が違いすぎる。苦しかった。楽しくもないのに笑わなきゃいけないし、楽しくもないのに多く人に常に囲まれていなければいけないと思っていた。

「そうか。僕は勘違いをしていたのか。」自分には誰にでも好かれる対人スキルの資質があると思っていた。そうなろうと必死だった。そうである人がいる会社に入って、そうである人がいた職種についた。僕の理想像はその人だった。その理想像は僕が持っていない羨ましくて眩しいものを持っているけれど、それは僕の役割ではないと思った。自分はこうあるべき、という枠の中でもがいていた。辛かったのに辛かったことに気付かなかった。

とある言葉を思い出した。鬱病の克服のためにやった内観療法で、仏教のお坊さんと10日間同じ部屋で過ごした時に言われた言葉。当時の僕は自己啓発マニアだった。

自己啓発は自分の理想を引き上げてしまいます。でも現実は変わらないのでその”差”に苦しむことになる。あなたの理想と現実が一致した状態をつくりましょう。そのために内観を使ってください。」

僕は諦めることにした。誰にでも好かれることも、誰にでも気安く話しかけることも。それは僕の望みではない。ナンパをしながら、道行く女性に声をかけながら僕はいつも「本当にこれでいいのか」と思っていた。

 

それでもやっぱり僕にはナンパしかなかった。ナンパしかないと思い込んでいた。街に行くことが億劫だとしても、高石宏輔さんに教えてもらった気功体操でやる気が出る状態をつくっては渋谷に行っていた。自分でも何をやっているかわからなかったけど、考えるよりナンパをしている方が楽だった。

 真冬で寒かったけど綺麗な女性と過ごす夜を考えたら休む訳にはいかなかった。完全に中毒だったと思う。

 

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後編に続きます。